本稿について
Robert SamsのA Note on Cryptocurrency Stabilisation: Seigniorage Sharesを読みます。
今回の範囲は「Elastic Coin Supply」です。原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- エラスティックなコイン供給スキーム(安定化スキーム)は、ブロック数で定義されるリベース期間中にコイン価格が変動したら、その変動した割合分をコイン供給に反映させるスキームである。
- 安定化スキームの暗号通貨への実装には、「どうすれば外部のファクターが変数として関わるコイン価格を最小限の信頼しか必要としない方法でネットワーク内部で表現できるか」「どうやってリベース期間ごとの供給量の差分を分配するか」という2つの課題がある。
※以下、今回まとめた範囲の和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
エラスティックなコイン供給(Elastic Coin Supply)
しかしコインの安定化スキームでは、コイン価格の変動はコイン需要の変動の代用となり、コイン価格の変動に反応してコイン供給が変動する。アイデアはこうだ。コイン価格がX%変動すると、それに続いてコイン供給がX%変動し、はじめのコイン価格に跳ね返ってくる。それを示したのが図1の緑の四角である。
従ってコインの市場価格安定化を狙うプロトコルの中心となるオペレーションの原則は次のルールである。すなわち、予め定められたインターバル期間が経過したあと、その期間でのコイン価格の変動がX%であればコイン供給をX%変動させる。
より形式的に、このインターバル期間をnブロック単位で定義される「リベース期間(rebase period)」と呼ぶことにしよう。コイン供給ルールには次が求められる。
ここで、iはi番目のリベース期間、Qはコイン供給、Pはコイン価格である。
2つの難題
では、実際にどうやってこのようなスキームを暗号通貨に実装したらよいだろうか。ここで解くべき問題は次の2つである。
- 最小限の信頼を必要とする方法でいかにしてネットワーク内部でPiを表現するか?
- どうやってΔiを分配するか?
最初の問題は困難である。なぜならどうやってプロトコルがPiを定義(コモディティや消費財のインデックスのコイン価格、あるいは単純にコインのUSD価格として定義されるかもしれない)したとしても、その変数はシステムの外の世界の事実に関するものであって信頼を最小化する何らかのメカニズムを介してシステム内部で表現される必要があるものだからだ。どんなメカニズムがこのような特性を持っているのかは、控えめに言っても明らかではない。この問題を解くためのいくつかの戦略をこのノートの終章で検討するが、この問題は本ノートの焦点ではない。
それでは2番目の問題の解法の大枠を示そう。大半の暗号通貨システムはコイン供給を増やすだけであり、その分配はマイニング報酬を通じて行われる。しかし安定化スキームでは、E[Δi]が正であるとしてもΔiが負である場合があれば、コインの安定化にコイン供給の増加だけでなく「減少(reducing)」が必要であり、マイニング報酬チャネルはいかにしてΔiを分配するかという問題の解決法とはならない。(※1)
筆者注:
- ※1:Δはあるリベース期間と一つ前のリベース期間のコイン供給量の差である。期待値としてのΔがプラスであっても1度でもΔがマイナスになることがあれば、その前後でコイン供給を減らさなければならない。"減らす"必要があるので、新しく発生したコインを分け与える前提であるマイニング報酬としての分配は使えない。
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