簡単まとめ

Robertのシニョリッジシェア論文を読んでみる2

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本稿について

Robert SamsのA Note on Cryptocurrency Stabilisation: Seigniorage Sharesを読みます。

今回の範囲は「Coin Demand」です。原文はこちらになります。

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今回のまとめ

  • コイン需要の観点から取引的コイン需要CDTと投機的コイン需要CDSに分け、コイン需要CD = CDT + CDSとして分析する。
  • CDSは当然CDTの期待水準(いくら値上がり/値下がりするか)により動くが、CDTは価格ボラティリティに反対向きに関係する点が問題である。
  • CDTは価格ボラティリティに反対向きに関係するとする根拠は、人のリスク回避型の商品を好む傾向であることと、コインの需給リバランスに関係する頻度と取引コストがボラティリティに相関することである。

※以下、今回まとめた範囲の和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。

コインの需要(Coin Demand)

コイン需要の観点から次の2つのタイプに分けて分析することには意義がある。

  • 取引的コイン需要(Transactional Coin Demand)CDT
  • 投機的コイン需要(Speculative Coin Demand)CDS

取引的コイン需要は取引を行う目的で一定量のコインを所持しておきたいという要望である。CDTはこのようなモチベーションを保持されているコイン残高の合計と考えることができる。投機的コイン需要は価格上昇を見込んで一定量のコインを所持しておきたいという要望である。CDSは貯蓄ポートフォリオの一部として保持されているコイン残高の合計と考えることができる。

任意の個人を考えると、取引的と投機的の両方でコインを所有するモチベーションがある可能性があるが、それぞれのモチベーションを反映するのに頭の中でコイン残高の区分をすることさえしないかもしれない。しかしながらそのようにコイン需要をモデル化することは分析的かつ実証的な目的の点で意味があるので、コイン需要の合計は次の通りであるとして分析する。

マクロ経済の研究では、法定通貨の投機需要はしばしば利率水準やリスクアセットに対するリスク回避の程度などのファクターによって生じるものと推測される。しかし暗号通貨では事情が異なる。暗号通貨はまだ若く普及増加率も相当であるので、最もボラティリティの大きなアセットだ。投機需要を動かすものは皆さんが推測する通りである。最も寛容な合理的期待仮説による分析では、CDSは将来のCDTの期待水準によって動く。寛容さを下げると、CDSはコインの価格変動自体、トレンドフォローの動き、グレーターフール理論によって動く。

問題はCDT自体はコイン価格のボラティリティレベルに逆向きに関係しているということだ。熱心な人たちとアーリーアダプターにもかかわらず、大半の人は単に財産の観点でリスク回避的であるという理由でボラティリティのある交換媒体よりも安定している交換媒体を所持することを好む。私は暗号通貨コミュニティの(主に教育を受けていて裕福である)社会経済的な構成はマネー需要に対するリスク回避性の関係性を軽視していると思う。貧しければ貧しいほどお金で持つ財産の割合は増加するのであり、普及の可能性を考慮する場合にはお金に対するジニ係数は財産全体に対するジニ係数よりも小さいということを覚えておくことが重要だ。

CDTがコイン価格のボラティリティに負の影響を受けると考えるべきとする理由はリスク回避性だけではない。ボラティリティは取引コストも生み出す。コイン価格の相当の低下には法定通貨のコイン化が必要であり、コイン価格の相当の上昇にはコインの現金化(あるいは他のアセットへの変換)がコインの購買力の要求バランスを維持するために必要だ。このようなリバランシングの「頻度(frequency)」と各リバランシングの「取引ごとのコスト(cost-per-transaction)」の双方がコインのボラティリティに相関する。

コイン需要はコインの量ではなく「購買力(purchasing power)」の量である。すなわち、

である。ここでPはコインの購買力(主要商品やサービスのコイン価格)であり、Qは所与のコイン価格に関するコイン需要量である。価格弾力性が実証的(事後的)な事柄である普通の商品に対する需要曲線とは異なり、コインの需要量とコイン価格の関係は図1に示すかCD曲線に見られるように先験的(事前的)なものと推測される。

Bitcoinのようなプロトコルでは、例えばマネー需要がCDからCD*へシフトすると、赤い四角で表すように価格はPからP*へと変動することになる。

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