簡単まとめ

Robertのシニョリッジシェア論文を読んでみる1

更新日:

本稿について

Robert SamsのA Note on Cryptocurrency Stabilisation: Seigniorage Sharesを読みます。

本件はステーブルコインに関する論文(本人曰くメモ)です。ステーブルコインには大きく分けて資産担保型(さらに法定通貨担保型と暗号通貨担保型に分かれる)と無担保型(アルゴリズムで制御)がありますが、シニョリッジシェアは無担保型に属し、いかに需給制御してコインの価格安定化を図るか?に対する一つの考え方を示すものです。

今回の範囲は「Coin Supply and Volatility」です。原文はこちらになります。

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暗号通貨の価格安定化に関するメモ書き:シニョリッジシェア

Robert Sams

rs*clearmatics.com

初版:2014/10/24

現行版:2015/4/28

今回のまとめ

  • Bitcoin等の外部ファクターによらずアルゴリズムによって決定的に決まるコインのサプライルールは、需要を価格に反映させておりかえって交換媒体として利用されることを妨げている。交換媒体、すなわち通貨として利用されることを前提として考えると合理的なルールであるとは言えない。

※以下、今回まとめた範囲の和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。

要諦

Bitcoinなどの暗号通貨はコインの供給をシンプルかつ「決定論的な(deterministic)」コイン増加ルールで管理している。その結果、予期せぬコイン需要の変化がコイン価格の変更に反映されてしまい、ボラティリティの要因になるとともに交換媒体としてのコインの利用を妨げてしまっている。次世代の暗号通貨は、コインの市場価格の変動に比例してコインの供給量を調整する「エラスティックな(elastic)」供給ルールを包含すべきだ。このようなスキームを実装するために解決すべき難題が2つある。このノートはこのうちの問題の一つに対する解を述べるとともに、もう一方の問題をどう解くかについていくつかの提案を行うものである。

コインの供給とボラティリティ(Coin Supply and Volatility)

Bitcoinの主たるボラティリティは投機の変動に起因する。そしてこれは結局のところBitcoinの未来に対する純然たる不確実性に起因する。もっと効率的な流動性メカニズムがこの純然たる不確実性を低減するのに一役買うということはない。[5] --Nick Szabo

Bitcoinなどの暗号通貨はコインの供給をシンプルかつ「決定論的な(deterministic)」コイン増加ルールで管理している。「決定論的な」と言う語の意味するところは、コイン供給の増加率が予め完全に決められておりシステム外のファクトによる影響を受けないということである1。これは純正な商品貨幣システムからさえも著しく乖離している。貴金属の供給も素材を地面から入手するのにかかるマージナルコストと交わる価格変動に反応するからだ。

暗号通貨システムが一般的な交換媒体であろうとするならば、決定論的なコイン供給は機能ではなくむしろバグである。なぜならコイン需要の変動がコイン価格の変動に変換されて、価格のボラティリティを需要のボラティリティに比例させてしまうからである。しかしそれは単なる一時効果に過ぎない。需要はコインの将来の価格水準に対する「期待(expectations)」に関して投機を招く。長期的なコインの普及率の期待値がコインの供給増加率よりも圧倒的に高ければ、人は将来の普及を見越してコインを買って保持するだろう。そうしてコインの現在価格の上昇が起こる。

現在価格に将来への期待が織り込まれるというのは市場の自然な性質である。決定論的なマネーサプライと不確実な将来のマネーデマンドが重なり合って、コインの市場を価格をある種自らの将来的な普及についての予測市場にさせてしまうのだ。将来的な普及率は非常に不確定性が強いので、期待がコイン関連ニュースで揺れ動いたりコイン市場が高いボラティリティによる高期待リターンを(そんなうまい話はないのだけれども)正当化したりするのにつれてボラティリティが高くなるのは避けられない。

問題は高い水準のボラティリティは人が交換媒体としてコインを使うのを阻んでしまうことだ。コインを買持する投機の強気ケースが将来的に相当の交換媒体として利用されることの期待に基づくものであるとすれば、決定論的なマネーサプライルールは自滅的であると言えるだろう。

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邦訳には誤りがある場合がございます。予めご承知おき下さい。

確実な情報を知るためには冒頭に示した原文をご参照くださいますようお願いいたします。

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