本稿について
様々なブロックチェーンにインスピレーションを与えているプロトコルBitcoin-NG(Bitcoin Next Generation)の論文を見ていきます。本稿では「8. Evaluation」の8.1を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- 実験の設定
- ブロックの生成頻度とブロックサイズの選び方について(Bitcoin-NGではマイクロブロック)
- Bitcoin:プルーフオブワークのディフィカルティを下げることでブロックの生成頻度を変化させる。10分ごとに1MBのブロック1個となるようにブロックのサイズを選ぶ。
- Bitcoin-NG:100秒ごとに1キーブロック生成を維持することでマイクロブロックの生成頻度を変化。10分ごとに1MBのブロック1個となるようにマイクロブロックのサイズを選ぶ。
- 帯域幅(トランザクションの頻度)は3.5tps。ただしBitcoinの帯域幅の方がBitcoin-NGよりも小さく、他指標に関してBitcoinに有利な環境である。
- ブロックの生成頻度とブロックサイズの選び方について(Bitcoin-NGではマイクロブロック)
- ブロックの生成頻度を上げるとどうなるか?
- Bitcoin
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒減少(=改善された。ただしBitcoin-NGの方が良好)
- 公正性⇒減少(=悪化した)
- マイニングパワー利用率⇒減少(=悪化した)
- プルーニングにかかる時間⇒減少(=改善された。ただしBitcoin-NGの方が良好)
- 勝ちにかかる時間⇒増加(=悪化した)
- Bitcoin-NG
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒減少(=改善された。Bitcoinよりも良好な結果)
- 公正性⇒影響しない(=Bitcoinより高く、良好な結果を維持)
- マイニングパワー利用率⇒影響しない(=Bitcoinより高く、良好な結果を維持)
- プルーニングにかかる時間⇒減少(=改善された。Bitcoinよりも良好な結果)
- 勝ちにかかる時間⇒影響しない(=Bitcoinより短く、良好な結果を維持)
- Bitcoin
- ブロックの生成頻度を下げるとどうなるか?
- Bitcoin
- 上記のブロック生成頻度を上げた場合と逆の結果。つまり...
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒増加(=悪化した)
- 公正性⇒増加(=改善された)
- マイニングパワー利用率⇒増加(=改善された)
- プルーニングにかかる時間⇒増加(=悪化した)
- 勝ちにかかる時間⇒減少(=改善された)
- Bitcoin-NG
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒増加(=悪化した)
- 公正性⇒影響しない
- マイニングパワー利用率⇒減少(=悪化した。ただし低競争環境下で実験を行ったことによる人為的な結果と推測される)
- プルーニングにかかる時間⇒増加(=悪化した。ただし低競争環境下で実験を行ったことによる人為的な結果と推測される)
- 勝ちにかかる時間⇒影響しない
- Bitcoin
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
8. 評価
8.1 ブロックの頻度
私たちはまずコンセンサスディレイの改善を目標に実験を行う。Bitcoinについてはプルーフオブワークのディフィカルティを下げることでブロックの生成頻度を変化させる。Bitcoin-NGについては100秒ごとに1キーブロック生成を維持することでマイクロブロックの生成頻度を変化させる。それぞれの頻度に関して、ブロックサイズを稼働中のBitcoinシステムと等しいペイロードスループットとなるように、すなわち10分ごとに1MBのブロック1個となるようにブロックのサイズ(Bitcoin-NGについてはマイクロブロックのサイズ)を選ぶ。図8に結果を示す。
トランザクションの頻度で測定される帯域幅は3.5に近いことが確認され、これは稼働中のBitcoinシステムのレートに近い。実験ではBitcoinの帯域幅はBitcoin-NGの帯域幅よりも小さく、他の指標に関してBitcoinにアドバンテージを与えている。
想定通り、ブロック頻度を上げればBitcoinのコンセンサスレイテンシは低下した。これはトランザクションがより高い頻度で台帳に置かれるためである。プルーニングにかかる時間はブロック頻度の上昇につれて顕著に改善された。それでもBitcoinの高頻度のフォークのせいでBitcoin-NGよりもコンセンサスレイテンシは大きくプルーニングにかかる時間も長い。なお、キーブロックも自由に頻度を下げることはできるもののフォークは起きる点は注意されたい。キーブロックのフォークは、どれか一つのブランチのキーブロックが他ブランチよりも多くなった時点でのみ解消されるが、キーブロックの間隔が長ければプルーニングにかかる時間も長くなる。
Bitcoinのマイニングパワー利用率はブロック頻度が上昇すると急速に低下し、1/4ほど、換言すれば最大のマイナーのサイズとほぼ同等になる。極端な状況では、ブロック生成はとても速いため、あるマイナーが他マイナーの生成したブロックを知るころには別のマイナーがもっと多くブロックを生成してしまっている。こうなると最大のマイナーだけがメインチェーンのブロックを生成し、他マイナーは追従するだけになる。これは公正性の悪化も示している。というのも最大のマイナーが望むブランチを延伸することでフォークが解決されてしまう可能性が高いからだ。マイナーが必死に先頭集団に追いつこうとすると、遅いマイナーは古いブロックをマイニングすることになり勝ちにかかる時間は増大する。
Bitcoin-NGの競争はキーブロック生成に限定されるので、マイクロブロックの生成頻度が高いにもかかわらずフォークはめったに起こらない。マイクロブロックの頻度を上げることでコンセンサスディレイとプルーニングにかかる時間の双方を低減することができる。その他全ての指標に影響はなく、最適な水準を維持し続ける。
ブロックの頻度を低くしたBitcoin-NGの実験では、僅かなマイニングパワー利用率の低下とプルーニングにかかる時間の上昇が観測される。これは実験のセットアップによる人為的な影響である。私たちは一定数のブロックに対して実験を行っており、それゆえに競争の少ない実験はキーブロックのフォークが観測されるのに十分なくらい長期間続く。しかし、実際的なBitcoin-NGの実装ではパフォーマンスに影響させずにもっとキーブロック間隔を空けることができる。そのためキーブロックのサイズが小さいおかげでキーブロックのフォークが起こる可能性は非常に低く、ナカモトブロックチェーンで同速・標準のブロックの条件で考えた場合のフォークの可能性よりも低い。
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