簡単まとめ

LewenbergのBitcoinマイニングプールにおける協力ゲーム理論分析論文を読んでみる2

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本稿について

Bitcoinマイニングプールのインセンティブ設計について協力ゲーム理論の観点から分析したLewenbergらの論文を見ていきます。本稿では「1. Introduction」を見ます。

原文はこちらになります。

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今回のまとめ

  • 現在のBitcoinのマイニングの仕組みではマイナー間における報酬のボラティリティが大きい。つまり、少数のマイナーが大きな報酬を得る一方で、多数のマイナーは全く報酬をもらえない。そこで協力してマイニングし報酬を分けあうマイニングプールを作るとボラティリティが小さくなるだけでなく累積の収益が増加する。
  • 本論文では、マイニングプールが期待値で見た場合にそのマイニングパワーに鑑みて高い報酬を得られることを示す。また、その報酬の非線形性が通信のディレイに起因することを示す。
  • また本論文では、協力ゲーム理論を用いて報酬の非線形のために安定した報酬分配が困難であること、特にトランザクション負荷が高いほどその困難性が増すことを示す。

※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。

1. はじめに

Bitcoin[30]は2009年に作られたデジタル通貨である。これが主に実現したことは、完全に非中央集権的な方式で有効なトランザクション履歴についてコンセンサスを形成する機能である。

BitcoinネットワークのエージェントはBitcoinの公開台帳、いわゆる「ブロックチェーン(block chain)」を維持・保全・延伸するための計算パワーを提供する。リソースを提供する見返りとして、エージェントは投じた計算パワーに比例するいくらかの金額のBitcoinをもらう。

Bitcoinのセキュリティは「プルーフオブワーク」のフレームワークに依拠し、ここではオーソライズするノードによって十分な量の計算パワーが注ぎ込まれたという証明をシステムが得たときに限り資金移動が有効とみなされる。これを実現するため、「マイナー(miners)」と呼ばれる参加者のネットワークがハッシュ計算の形で常に暗号パズルを解こうとしている。共有データ構造、つまりブロックチェーン内の各ブロックにはトランザクションのまとまりが含まれている。ブロックチェーンに新しいブロックを追加するプロセスを「マイニング(mining)」という。ブロックをマイニングするため非常に大きなありうる空間Xでインプットを試験し、暗号ハッシュ関数hを使ってブロックのコンテンツとインプットを一緒にハッシュ化したときに一定の閾値tを下回る値、すなわちh(b(x))<t(ここで、b(x)はブロックとその中に挿入された値を表す)であることを満たすインプットxXを探さねばならい。このようなインプットを探すインセンティブを参加者に与えるため、ハッシュが見つかってブロックがマイニングされ、ブロックがネットワークにリリースされ、そしてマイナーの多数(計算パワーの観点での多数)がこのブロックを有効であるとしてそのあとにさらなるブロックを作った場合、ブロックをマイニングしたマイナーに報酬としてBitcoinが与えられる。

空間Xからランダムに選択されるインプットxはハッシュ化した場合に小さな値となる非常に小さな確率を持ち、それをpt = PrxX(h(b(x))<t)で表す。従って、空間からランダムインプットを試すことは、成功確率ptのベルヌーイ試行である。いまのところBitcoinは「ネットワーク全体(entire network)」でブロックが期待値で10分ごとに1つマイニングされるように閾値tを設定している。ゆえに、最新のマイニングマシン[19]を持つ1人のマイナーは期待値で1ブロックをマイニングするのに687日待つことになる[44]。

これはマイナー間の報酬における大きな分散につながる。数ヶ月という長期間でさえも少数のマイナーが大きな報酬を得る一方で、マイナーの大多数は何らの報酬も得られない。大半のマイナーが安定した収入の流れ持とうと探しており、報酬の分散を減らすことを望んでいる。そうするためにマイナーはメンバ間で報酬を分けある「マイニングプール」というチームを作る。あるプールメンバが条件を満たすインプット(つまり、h(b(x))<tであるインプットx)を見つけると、ブロックは真イングされその報酬はプールメンバ間で分配される。プールの参加者らは等しい計算リソースを持つわけではないので、それぞれが費やした計算パワーに比例して報酬が分割される。

プールを作って計算パワーを合わせることはプール参加者の報酬のボラティリティを下げるだけでなく、トータルの累積収益も増やす。プールは一つの強力なノードとしてBitcoinネットワークに自らを提示するので、ネットワーク内における自然な衝突の場合には優勢であることで他のエージェントに対してアドバンテージを得ることができる。さらに、最近提唱されている攻撃により、ネットワーク全体の計算パワーの1/3超に及ぶプールはBitcoinのプロトコルルールを逸脱することで公正な報酬分配よりも多くを入手できる[24]。

私たちの貢献

私たちはマイニングプールの存在がどのようにBitcoinネットワークにおける報酬割当に影響するのかを考察する。偏った報酬の影響を分析し、プールが期待値で見るとその公正な比率(つまり、プールの参加者それぞれが持つわずかな計算パワーに相応なもの)よりも多くの報酬を得るという事実を明らかにする。非線形なリターンがネットワークのコミュニケーションディレイのパラメータによるものであることを示す。このことはどのマイニングプールに参加するかという意思決定を「戦略的選択(strategic choice)」にし、利得を最適化するためにどのプールに参加するかを選択するソフトウェアエージェントの利用を促すことになる。

私たちは「協力ゲーム理論(cooperative game theory)」のツールを使って、どのプールエージェンが参加を望むのかやどのようにプールメンバが金銭報酬をシェアする可能性が高いのかを調べる。報酬の非線形な性質のせいでプールの獲得した報酬を参加者間で安定した方法で分配するのが困難であることを示す。つまりどんな報酬割当をしたとしても、いくつかのマイナーが自らの期待報酬を増やすためにいま所属しているプールを脱退して別のプールに参加するインセンティブが生じることを示す。さらに、この不安定性はネットワークが高いトランザクションロードを処理するにつれてますます大きくなっていくことも示す。従って私たちはたくさんの人がBitcoinを利用するほどマイナーがプールを切り替える比率もますます高くなり、システムの利用に関していっそう大きなオーバヘッドが生じることにつながると考えている。私たちの分析は自動化されたエージェントに即して協力ゲーム理論の実用アプリケーションを構成する。これは利得を最大化するために任意の時点でどのプールへ参加するかに関わる意思決定をする要因となる可能性がある。これは現実世界のソフトウェア環境に適用されるゲーム理論ツールの用法を示している。

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