本稿について
様々なブロックチェーンにインスピレーションを与えているプロトコルBitcoin-NG(Bitcoin Next Generation)の論文を見ていきます。本稿では「8. Evaluation」の8.2を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- ブロックサイズを上げるとどうなるか?
- Bitcoin
- トランザクションの頻度=増加(=改善された)
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒増加(=悪化した)
- 公正性⇒減少(=悪化した)
- マイニングパワー利用率⇒減少(=悪化した)
- プルーニングにかかる時間⇒増加(=悪化した)
- 勝ちにかかる時間⇒増加(=悪化した)
- Bitcoin-NG
- トランザクションの頻度=増加(=改善された)
- コンセンサスレイテンシ(ディレイ)⇒増加(=悪化した)
- 公正性⇒影響しない(=良好な結果を維持)
- マイニングパワー利用率⇒影響しない(=良好な結果を維持)
- プルーニングにかかる時間⇒減少(=悪化した)
- 勝ちにかかる時間⇒影響しない(=良好な結果を維持)
- Bitcoin
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
8. 評価
8.2 ブロックサイズ
帯域幅のスケーラビリティを研究するため、ブロックサイズを変えて実験を行う。Ethereum[12]のブロック生成頻度と同様の高頻度を使用する。Bitcoinのブロック生成頻度を1/10秒に、Bitcoin-NGのマイクロブロックの生成頻度を1/10秒に、キーブロックの生成頻度を1/100秒に設定した。図9に結果を示す。
想定通り、ブロックサイズの増加に伴いトランザクションの頻度も上昇した。水平線(注:図9の「Transaction Frequency」のグラフにひかれている黒い水平線)は実働中のBitcoinシステムのレートを表す。
巨大なブロックは検証と伝搬により長い時間を要する。従って、ブロックの生成頻度が一定だとしてもマイナーが新しいブロックを知るのにかかる時間は長くなり、その結果フォークの機会も増える。
これらの実験は予想していた帯域幅とレイテンシのトレードオフも示している。コンセンサスレイテンシはフォークのせいで増加する。メインチェーンを選ぶのにより長い時間を要するからだ。勝ちにかかる時間も上昇する。より大きなブロックほど追いつくのに長い時間を要するからである。フォークの多さゆえにプルーニングにかかる時間も増加する。
トレードオフ曲線のスイートスポットを探すことを考慮すれば個のトレードオフは許容できるものかもしれないが、本当の問題はセキュリティに関連する。フォークは大幅なマイニングパワーロスの原因となる。これはBitcoinの帯域幅では(より高いブロック生成頻度ではあるものの)約80%にも達し、もっと小規模な攻撃者に対してもシステムを脆弱にしてしまう。
もっと大きな弊害となるのは公正性の減少である。1マイナーの公正性の悪化でさえも危険である。損失を避けるためにより勢力の大きなプールに加担してアドバンテージを得るインセンティブを他のマイナーに与えるからである。これはマイニングパワーの中央集権化を招き、Bitcoinのセキュリティ特性を取り除いてしまう。
Bitcoin-NGは定性的な改善を示し、公正性とマイニングパワーのセキュリティ関連指標における大幅な劣化に悩まされることはない。しかしロードが重い条件下ではクライアントは処理限界に近づき、維持するのが難しくなるほか、コンセンサスレイテンシとプルーニングにかかる時間の悪化も見られる。
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