本稿について
様々なブロックチェーンにインスピレーションを与えているプロトコルBitcoin-NG(Bitcoin Next Generation)の論文を見ていきます。本稿では「5. Security Analysis」の5.1の後半を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- 攻撃者のハッシュパワーが29%以上であればインセンティブの前提が機能しない。一般的な場合では23.2%よりも小さな攻撃者に対してセキュアである。ただし、ゼロレイテンシネットワーク下であるならばBitcoinの方がBitcoin-NGよりも攻撃耐性が高い(33%まで)。
- ユーザがキーブロックのコインベースアドレスに直接手数料を支払うことで手数料配分を回避することもできるが、マイニングを継続するマイナーのモチベーションの観点で考えればユーザにもマイナーにもメリットはない。
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
5. セキュリティ分析(続き)
5.1 インセンティブ(続き)
最適なネットワーク仮定
およそ29%よりも大きな攻撃者に関して、Bitcoin-NGではインセンティブの適合性を維持できない。巨大な攻撃者に関しては2つの条件の共通部分が空である。しかし、このことが一般的なケースに影響するわけではない。一般的なケースでは、Bitcoin-NGはランダムタイブレークがあるナカモトブロックチェーン[25]と同様、セルフィッシュマイニングのために23.2%よりも小さな攻撃者に対してのみセキュアである[49]。
しかし、最適なネットワーク仮定の下ではBitcoinのブロックチェーンはBitcoin-NG以上に高い耐性がある。つまり、攻撃者が急いでメッセージを送ることのできないゼロレイテンシネットワーク、要するに他のノードがオリジナルのメッセージの前に攻撃者のメッセージを受信するという条件を満たすようにメッセージを受信してそのメッセージを送信するネットワークを仮定すると、Bitcoinはおよそ1/3ほどまでの大きさの攻撃者の行うセルフィッシュマイニングに対してセキュアであると信じられている。
手数料分配の迂回
ユーザはトランザクション手数料を払わない代わりに現在のリーダーのキーブロックのコインベースアドレスを使ってそのリーダーに直接支払うことで、40-60%のトランザクション手数料分配を避けることができる点を付け加えておく。しかし、そうしたとしてもユーザに特段のアドバンテージがあるわけではない。これまでに見てきたように現在のリーダーのみに手数料を支払うことはマイクロブロックにトランザクションを配置する直接的なモチベーションを高めるが、未来のマイナーが子のマイクロブロックの後にマイニングするモチベーションを下げる。さらに言えば、もし現在のリーダーがエポック終了前にこのトランザクションを取り込まないとすれば、後続のリーダーがこのトランザクションを配置するモチベーションはない。
その他の手数料操作の動機、例えばフォーク後にあるブランチをマイナーに選択してくれるように促すために多くの手数料を支払う等はBitcoin-NGだけでなくBitcoinにも当てはまり、この研究のスコープ外である。
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