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暗号通貨広告禁止の実際について3

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本稿について

前回はGoogleの広告ポリシーの更新内容について確認した。今回は、大手匿名制SNSのTwitterの暗号通貨に関する広告禁止の内容について確認する。

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Twitterの暗号通貨の広告禁止について

2018/4/11現在、Twitterの暗号通貨関連の広告禁止について、Twitter社から正式なプレスリリースや広告ポリシーの更新内容が発表があったわけではない(Twitterの広告ポリシーはここで確認できるが、最終更新日は2017/8/30となっている)。本件の情報のソースは、2018/3/27にTwitter社がロイター(Reuters)に語ったとされる以下の記事である。

  1. Twitter to start ban of most cryptocurrency ads on Tuesday
  2. Twitter to ban cryptocurrency ads from Tuesday as online crackdown widens
    (日本語版はこちら

上記記事に対してTwitter社から否定のリリースは出ていないことから、記事内容は正しいものと考えられる。

1が初報、2が1をやや詳細化した内容という位置づけになる。2は1の内容を全て包含しているため、2を見ていく。

ロイター曰く、Twitterは2で、暗号通貨広告の禁止時期とその理由について、以下のように述べているそうだ。

Twitter Inc (TWTR.N) will start banning cryptocurrency advertising from Tuesday, joining Facebook and Google in a clampdown that seeks to avoid giving publicity to potential fraud or large investor losses.

(筆者訳:Twitter社は火曜日(2018/3/27)から暗号通貨広告の禁止を開始する。FacebookやGoogleに続いて取締りの流れに加わり、詐欺や投資家の大規模な損失につながりかねない宣伝がされるのを防げるよう模索する。)

そのうえで、禁止措置の内容を次の通りに述べている。

The prohibition will cover advertising of initial coin offerings (ICOs) - crowdfunding used to raise cash by creating new coins - as well as token sales, the San Francisco-based firm told Reuters on Monday.

(筆者訳:禁止措置はICO(新たなコインを作ることで資金調達するために用いられる空度ファンディング)とトークンセールも含まれるでしょうと、サンフランシスコを拠点とする会社(Twitter)は月曜、ロイターに語った。)

The new policy, which will be rolled out over the next 30 days, will also ban ads by cryptocurrency exchanges and cryptocurrency wallet services, unless they are public companies listed on certain major stock markets.

(筆者訳:新しいポリシーは今後30日以内に公表されます。新しいポリシーでは、主要な証券市場に上場している公開会社でない限り、暗号通貨取引所や暗号通貨ウォレットサービスの広告も禁止するでしょう。)

For Japan, these will be limited to crypto exchanges regulated by its national financial regulator, Twitter said.

(筆者訳:日本では、金融庁の認可を得た暗号通貨取引所だけに限られるでしょう、とTwitter社は述べた。)

考察

(※)以下の考察はまだTwitterの新しいポリシーが公表されていない中でのロイター記事をもとにした考察であることを予め断っておく。

Twitterが懸念している点は、暗号通貨関連の広告が詐欺や投資家の損失になってしまう可能性がある点である。また、禁止の対象はICOやクラウドセールから、暗号通貨取引所、暗号通貨ウォレットサービスと多岐にわたる。これらの点はFacebookやGoogleと共通していると言える。

しかし、「主要な証券市場に上場している公開会社でない限り」という条件付きである点がFacebookやGoogleの禁止措置と大きく異なる点である。

これは、「主要な証券市場に上場している公開企業」であれば、暗号通貨関連の広告をしても差し支えないと読み替えることができる。すなわち、何らかの形で暗号通貨を取り扱おうとするものは、「主要な証券市場に上場している公開企業」になるという自身の努力如何でTwitterに広告を認めてもらえる可能性があるということである。FacebookやGoogleのようにプラットフォーム側のさじ加減で全てが決まるのではなく、一定程度は自身の努力で対応可能ということである。

ただし、以下のような懸念・問題点もあり敷居が高いのは間違いなさそうだ。

  • 「主要な証券市場」が不明瞭
    具体的にどの市場を指すのかが明らかになっていない。マーケットによって上場の審査基準が異なる。
  • 上場にかかる多数の年月
    例えば日本では上場まで最短で3年かかると言われる。一方でブロックチェーン界隈では急速にテクノロジーが進歩していく。そのような世界で、最短で上場するにしても3年かかり、それまで広告が許されないというのは致命的である(さらに、上場したとしてもTwitterの審査を通過できるかという問題もある)。
    どうしても早期に上場を目指すのであれば、既に上場している企業の傘下に入るなどの方法もあるが、そもそも企業の傘下に入ること自体があまり例がない(直近では、非公開企業のコインチェック株式会社がマネックスグループ傘下に入ったことが該当するかもしれない)。また、これは後述する2つの点で問題がある。
  • ICOやクラウドセールのメリットとかみ合わない措置
    一般的にICOやクラウドセールを行う目的は、"お手軽"に資金調達を行うためである。この"お手軽さ"というのは、実績を持たない新規開発プロジェクトという小さな単位でありながら、資産の大小を問わず不特定多数の個人にアクセスでき、なおかつ迅速に完了するというメリットを指す。
    Twitterの言う「主要な証券市場に上場している公開会社」ほどの実力ある企業であれば、既存の資金調達手段を利用でき、あえてICOやクラウドセールをするメリットが極端に薄い(というかないのでは...)。
    また、そもそもICOやクラウドセールはその後に作られるプロダクトが全てであり、その開発費用を調達しようとしているのにも関わらず、先に実績を示す(=上場する)ことを求める措置となっている点もかみ合わない。
  • Decentralizedな世界に企業のようなCentralizedなものが入り込む理念的な矛盾
    ブロックチェーンの特徴の一つは管理者がいないことにあるが、その世界に上場企業という管理された既存の金融システムが入り込むことに理念的な矛盾がある。これは国家などのCentralizedなシステムによって当該のブロックチェーンが管理される(=Decentralizedな性質を失う)ということであり理念的な矛盾を孕んでいる。
    とはいえ、そういう形のコイン・トークンが出てきていることも事実である。

上記のような点を見ていくと、暗号通貨関連を取り扱うプロジェクトがTwitterへの広告掲載を行おうとするときは、次のような考え方になるだろう。

暗号通貨関連プロジェクト Twitter広告掲載のために採りうる選択肢
①未上場で、新しい開発プロジェクト(3年未満) 1.上場企業の傘下に入る。
②未上場で、活動歴の長いプロジェクト(3年以上) 1.会社を設立し、上場を目指す。
2.上場企業の傘下に入る。
③上場済み企業で、既にプロジェクトを持つ場合 対応不要。
④上場済み企業だが、プロジェクトを持たない場合 1.何らかのプロジェクトを傘下に収める。
2.自社でプロジェクトを立てる。

①と④、②と④である程度の思惑の一致するところがあるので、Twitterに広告掲載できる可能性はあると考えている。ただ、いずれの方法においてもCentralizedな何某かがDecentralizedな世界に入り込んでくるのは間違いないだろう。

個人的には、言うまでもなく詐欺的なICOが横行しているような状況を野放しにしておくことを良いことだとは全く思わないし、Centralizedな思想が支配的な世界からDecentralizedな世界へ一息に変わるとも思っていない。ゆえに、一定程度Centralizedの監督の下で移り変わっていくものだと考えているが、どこまでCentralizedがDecentralizedを侵食するかという点で多少気がかりではある。

(次稿に続く。次稿では、暗号通貨広告禁止の総括を行う。)

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