Monex Groupとは
オンライン証券で有名な企業
マネックスの名前はオンライン証券の一つである「マネックス証券」として聞いたことがあるだろう。マネックスグループは、それらマネックスブランドの企業の金融持株会社である。
オンライン証券会社としては、非常に有名な企業である。国内だけでなく、アジア・パシフィックエリア、アメリカにも会社を有する。
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Monex Groupの仮想通貨・ブロックチェーンに対するこれまでのアクション
本腰を入れたのはごく最近で、国内においてはやや出遅れ感がある
マネックスグループのIR情報を見ていくと、仮想通貨・ブロックチェーンに対する活動を開始したのは2015年からであるが、グループの事業として本腰を入れ始めたのは最近であることが分かる。
IRから該当する活動を抜粋すると以下のようになる。
- 2015年:Orbに出資。
- 2016年:特に活動はなし。
- 2017年:第2四半期より、にわかにブロックチェーンへのアクションが多くなる。
- 10/27:2018年3月期第2四半期決算 説明資料の冒頭で、第二の創業のミッションステートメントでブロックチェーンに触れ、「独自のブロックチェーンの開発とそのICOも視野に入れたい」「自ら仮想通貨交換業を行い、常にアップトゥデートなトレーディング環境を提供してきたい」等と述べる。
- 12/10:子会社のTradeStation Group, incがCboe(アメリカ)のビットコイン先物の取扱いを開始することをリリース。
- 12/17:子会社のTradeStation Group, incがCME Group(アメリカ)のビットコイン先物の取扱いを開始することをリリース。
- 12/日付不明:子会社のマネックスクリプトバンクを設立(参考)。
- 2018年:さらにアクションを加速。
- 1/31:マネックス仮想通貨研究所を設立。また、2018年3月期第3四半期決算 説明資料の冒頭で、「マネックス証券株式会社およびマネックスクリプトバンク株式会社(2017年12月設立)による仮想通貨交換業の開始に向け準備中」「また、グローバルに展開する仮想通貨取引所との提携を計画中」「仮想通貨に関する最新でわかりやすい情報の提供を企図してマネックス仮想通貨研究所(所長:大槻奈那 兼マネックス証券チーフ・アナリスト)を創設(2018年1月31日) 」と説明。
- 3/8:子会社のTradeStation Group, incがGDAX(アメリカ)と提携し、主要仮想通貨の現物データを無料で即時配信することをリリース。
- 4/6:コインチェック株式会社を完全子会社化したことを発表。(記者会見の内容のまとめはこちら)
仮想通貨界隈での知名度は高くない
コインチェック買収が行われるまで、国内の仮想通貨界隈での知名度は高いとは言えない状況だったと考えられる。
混同される可能性があるのであえて触れておくが、マネックスグループは、マネーパートナーズとは異なる。仮想通貨界隈での立ち位置は次のようなところだろう。
- マネーパートナーズ:取引所はまだ設立できていないが、仮想通貨交換業の登録を2017/9/29に完了。同社はJCBA(日本仮想通貨事業者協会)正会員かつ、同社代表取締役がJCBAの会長を務める。また、JBA(日本ブロックチェーン協会)賛助会員。コインチェックのNEM盗難事件に端を発する、統一仮想通貨自主規制団体の立ち上げに関連するニュースで名前を聞いたこともあるだろう。
- マネックスグループ:参入は表明しているものの、仮想通貨交換業の登録はできておらず、そもそも申請を出していない。同社はJCBA準会員。
交換所・取引所というと主にBtoCのビジネスになるが、上記のアクションを見ても分かる通り、マネックスグループはいわゆる"C"の目に触れるような活動が国内においてはほぼないことが伺える。マネーパートナーズのようにメディアに露出する機会があればサービスやプロダクトという形ではなくともひとまず"C"にアプローチできるが、マネックスグループはこれまでそのような機会もなかったし、準備も整っていなかった。
環境要因
仮想通貨業界への参入を考えるマネックスグループに対し、環境要因は必ずしも良いものとは言えなかった。
- 内部要因
TradeStation, incに見られるように海外(アメリカ)ではビットコイン関連サービスを提供し始めているが、国内ではbitFlyer等の登録済み業者に比べると出遅れ感があった(海外においても、先駆的とは言えないが...)。2017年末のマネックスクリプトバンク、2018年初頭のマネックス仮想通貨研究所などアクションを重ねたが、ようやく手を付け始めたという段階だった。 - 外部要因
コインチェック事件を受け、資金決済法に基づくみなし業者への立ち入り、さらには業務停止命令/業務改善命令が多く出されたことに見られるように、金融庁の登録審査体制が急速に厳しくなっていった。
例えばヤフーやメルカリのように、マネックス以外にも多数の業者(後発組業者)が仮想通貨業界参入に名乗りを上げていた。
また、業界参入を企図する企業の中には、SBIバーチャルカレンシーズやマネーパートナーズ(いずれも仮想通貨交換業者登録済み)のように、マネックスグループと同様に証券業を中核としている企業もあった。
コインチェック完全子会社化の意味
上記のような背景を踏まえると、コインチェックの債権債務を全て継承しても今回の買収に踏み切った理由は以下のようになろう。
既に登録済みの仮想通貨交換業者に追随するため。
コインチェックのNEM盗難事件を受けて、金融庁の登録審査が厳格化することは必至と言える。そのような状況下で、ゼロから審査に通るように体制構築を進めれば、既に登録済みの仮想通貨交換業者にますますビジネス上の機会を奪われていく。従って、早期に追随できるような体制を用意する必要があった。
新規に参入しようとする後発組業者に対して優位性を築くため。
第二の創業として仮想通貨業界への参入意思を表明したマネックスグループだが、申請には至っていない状況だった。しかも、新規に仮想通貨業界に参入しようとする後発組の業者は多くあるため、参入が遅れるほど後発組との争いは熾烈さを増す。しかし、コインチェックを買収すれば、完全にゼロから体制を作る必要がある業者に比べて先行して自社の競争優位性を築くことに注力できる。その点で、買収するメリットがあった。
国内(国外にも)にも名が通るコインチェックブランドを入手するため。
記者会見でも触れられていたが、コインチェックの事件は各国の言語で紹介されるように世界的な知名度がある。事件を起こしたことからブランドの信用力は現時点で失墜していると考えるのが妥当と思われるが、どういう形であれ「知られている」ことは「知られていない」場合に比べてニュースが広く届きやすいというアドバンテージがある。
また、現時点では国内取引所の中で取扱いコインが多く、利用する取引所として選択肢に上がりやすいという利点もある。その他、取引所に取扱い通貨の価格が一目で分かるように設計されているなど、ユーザフレンドリーな(というか、初心者が入り込みやすいような)設計になっている。
こういったブランドとそのサービス・プロダクトは、信用が回復する手立てが打てればという条件付きではあるが、将来的に強みとして活かすことができるものであった。
金融庁の登録審査を早期にクリアする手段として現実的な解であったため。
コインチェックは仮想通貨交換業者としての申請を行っている。登録はされていないが、みなし業者として運営してきた実績がある。記者会見でも述べていたように、金融庁に相談済みのうえで買収を行っているので、マネックスグループはコインチェックの過去から現在に渡るまでの金融庁とのやり取りを全て引き継ぐことになる。
これは、もちろん業務改善命令対応を継承するということであるが、一方で、過去にコインチェックが金融庁とのやり取りをしてきた中で問題ないとお墨付きを得られている部分と、問題のある部分についてはそれが少なくとも一定程度は明確になった状態で引き継ぐことができるということである。
仮想通貨業界にクリティカルなアクションができておらず、「グローバルに展開する仮想通貨取引所との提携」等どうにか早期に参入する手段を経営戦略上模索していたマネックスグループにとって、現実的な解であった(早期参入を企図するにあたり他に有力な手段がなかったとも言える)。