本稿について
様々なブロックチェーンにインスピレーションを与えているプロトコルBitcoin-NG(Bitcoin Next Generation)の論文を見ていきます。本稿では「7. Experimental Setup」の後半を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- BitcoinとBitcoin-NGの比較実験を行った(前回からの続き)。
- ネットワークは既存のモデルがなく推定も困難であるため、少なくとも5つ以上のランダムに選ばれたノードが接続するランダムネットワークとした。レイテンシはBitcoinノードを観測して作ったレイテンシヒストグラムに基づいて設定し、帯域幅は約100kbit/sとした。この結果、ブロックサイズが大きくなるにつれて線形的にレイテンシも増加することとなり、Bitcoinと比較して一致する特性を持たせることができた。
- 大量のトランザクション処理を想定するとノイズが多くBitcoinあるいはブロックチェーン元来の特性を計測できないことから最小限までトランザクションの伝搬処理を減らす。具体的には人工的なトランザクションでブロックチェーンの初期化を行うとともに全ノードのmempoolを埋めつくす。
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
7. 実験のセットアップ(続き)
ネットワーク
Bitcoinオーバレイネットワークの構造は複雑で、その多くは意図的に隠されている。これは、DoS攻撃からBitcoinのセキュリティを守るとともに参加者のプライバシーを保持するためである(別の研究[29, 41]ではピアトゥピアネットワークに関する詳細について論じている)。ノードは近傍のノードを明らかにはしないが、これまでに発見したノードの上位集合は提供する。ノードの多くはファイアウォールで守られているので、ネットワークの全体のサイズを見積もることさえ難しい。ノード間のレイテンシも不明だ。その上、私たちが測定する指標の多くで重要な尺度は、あるマイナーがブロック生成を行うのと他マイナーがそのブロックの後にマイニングを始めるのとの間に要する時間である。ブロックはセカンドマイナーによって伝搬・検証されねばならないだけでなく、セカンドマイナーは自身のハードウェアに詳細情報を送らなければならない。距離的に離れた稼働マイナーがいるマイニングプールの場合、これは無視できない遅延を招くだろう。
システムの既存モデルがないため、各ノードが一様にランダムに選ばれる少なくとも5つ以上のノードと接続することでランダムネットワークを構築した。2015年4月7日に単一の観測ポイントから確認できる全てのBitcoinノードについてレイテンシを計測し、レイテンシヒストグラムを作り上げた。そしてこのヒストグラムに基づいて実験における各ノードペア間のレイテンシを設定した。各ノードペア間の帯域幅は約100kbit/秒とした。
私たちのセットアップとトポロジーの妥当性を検証すべく、実働システムのセットアップにおけるBitcoinの伝搬の特性を比較する。毎秒処理できるトランザクション数が一定であるよう、ブロックの生成頻度を変えながら異なるブロックサイズで実験を行う。図7はブロックサイズと伝搬時間との間の線形関係を示しており、DeckerとWattenhoferが行ったBitcoinの実働ネットワーク内での計測された線形関係[18]と似ている。
トランザクションの伝搬はないものとする
この研究のゴールはブロックチェーンのコンセンサスメカニズムを最適化することにある。しかし、高頻度でブロックを生成すると、生成によりブロックを埋めつくすことのオーバヘッドとトランザクションの伝搬がBitcoinの現行の実装では支配的なファクターとなる。これはBitcoinのプロトコル元来の特性ではなく、一般的に言ってブロックチェーンプロトコルの特性でもない。トランザクション生成と伝搬のメカニズムに起因するノイズを減らすため、トランザクション処理は最小限に減らす。実験開始前に私たちは人工的なトランザクションでブロックチェーンを初期化するとともに、全ノードのmempoolを同じトランザクションセットでいっぱいにする。トランザクションはいま稼働しているBitcoinシステムと同じサイズで、10分ごとに1MBのブロックで、3.5tpsの帯域幅である。
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