本稿について
Bitcoinマイニングプールのインセンティブ設計について協力ゲーム理論の観点から分析したLewenbergらの論文を見ていきます。本稿では「8. Discussion」を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- プールの報酬関数の非線形性はBitcoinプロトコルに本来的に備わっているものである。
- 提携構造の有無によらずこのプロトコルはどのような利益配分でもプールを移動するインセンティブを持つマイナーが存在する。
- ブロック生成率が上がると非線形性は高くなる。従って、Bitcoinがより多くのトランザクションを処理できるようパラメータの変更がされた場合にはいっそうプール選択の重要性が増し、自動的に最適なプールを選択してくれるソフトウェアが重宝されるだろう。
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
8. 考察
私たちはマイニングプールのインタラクションを協力ゲームとしてモデル化することでBitcoinネットワークのブロックマイニングを分析した。プールのマイナーがマイニングの収益を分配しうる方法に焦点を当て、これにゲーム理論の解概念であるコアを用いた。私たちが得た結果はプールの報酬関数の非線形性がプロトコルに本来的に備わっているものであることを示している。
提携構造のあるモデルでもないモデルでも、このゲームはコアが空である可能性が高いことを明らかにした。このことはどのような方法で収益を分配しようとも一定のマイナーにプールを移動するインセンティブが発生することを示している。プールを移動することで期待収益を上げることができるからである。私たちの理論モデルはいくつかの単純化と近似を行ってはいるが、これらの結果はシミュレーションに裏付けられている。
ブロック生成率が低ければ報酬の非線形性は小さい点を付け加えておきたい。いまのところBitcoinネットワークは最大で毎秒3.3トランザクションを処理できるが、例えばVISAは毎秒47,000トランザクションを処理できる[45]。Bitcoinが成長してもっと多くのトランザクションを処理するようになると、システムの負荷がパラメータの変更につながるかもしれず、非線形性の効果を大きくし、マイニングプールの選択がいっそう重要になる。従ってより多くのマイナーがプールの切り替え行動を表面化させ、自動化されたプール選択戦略のソフトウェア実装を用いるようになると考えている。
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