本稿について
Bitcoinマイニングプールのインセンティブ設計について協力ゲーム理論の観点から分析したLewenbergらの論文を見ていきます。本稿では「6. Mining As a Cooperative Game」の前半を見ます。
原文はこちらになります。
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今回のまとめ
- Bitcoinネットワークをソロマイナーだけから成る譲渡可能効用の協力ゲームとみなしてこれまでの結果を適用すると、3人以上のソロマイナーがいるマイナーネットワークの場合、コアが存在しない。つまり、協力関係を解消した方がよいマイナーが必ず存在する。
- なお、構造上利得を直接求めることはできないため、計算には分割統治法による近似値を用いる。
※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。
6. 協力ゲームとしてのマイニング
前章の結果をBitcoinの世界に適用するために、分割関数vのふるまいを調べる必要がある。しかし残念ながらBitcoinマイナーネットワークのトポロジーは未知であり絶えず変化し続けている。一般的な場合の扱いにくい分析を避けるため、提携構造の設定から離れてマイナーとプールのインタラクションを譲渡可能効用(筆者注:利得の譲渡が可能な)の提携形ゲームとしてモデル化する。これらの提携形ゲームでにおいて提携の価値は単純に提携のメンバーに依存し、他のプレイヤーには依存しない。このモデルをプール間の影響が存在しうるBitcoinの世界に採用すべく、提携は1つのみ形成可能であるとし、Bitcoin環境のトポロジーをソロマイナーのみからなるものとして固定する。
続いて、この提携形ゲームのコアが空となるようなネットワークの条件を調べる。単純なコアの概念を狭めることはつまり全体提携の安定性のみを考慮するということである。
提携形ゲームのネットワークを既に述べたようにC = <M, P, D, d, β>で表す。|M| > 2について以下の単純な仮定を置く。第一に、全てのマイナーが同じ計算パワーpi = 1/nを持つものと仮定する。ここで、n = |M|とする。第二に、|M| = 1であるあらゆるC ⊂ Mについてv(C) = 1/nでありv(M) = 1であると仮定する。一般的な場合におけるCの価値を表すため、最長チェーンにおけるCの比率を等式2を用いて見積もり、γCの見積もり結果をv(C)に割り当てる。
2人のソロマイナーから成るネットワークΓ2を仮定し、定理4を適用する。Γ2のパラメータは次の通りとする。
Γ2の1人目のマイナー(元のネットワークでCで表現されているプール)が持つ計算パワーはp1 = αC/(αC+αS)であり、2人目のマイナー(1人目のマイナーを除く残り)の計算パワーは p2 = 1 - p1である。制約のないパラメータλはβ(Γ2) = βを満たすように設定する。ここで、β(Γ2)は等式1により与えられるものである。最後にΓ2に完全な記述を与えるため、λ2 = αC + αSと置く。
このように設定する動機はγCの見積もりに分割統治法を適用するためである。まず、このマイナーネットワークを2つのサブネットワークに分ける。1つ目はプールから成り、2つ目はソロマイナーから成る。プールから成るサブネットワークの最長チェーンの成長率は補題2で示したようにαCである。ソロマイナーから成るサブネットワークはm = |M/C|の対称ネットワークで、最長チェーンの成長率はλ(m + Dλ)/(m + mDλ)で見積もることができる(詳細については第7章を参照されたい)。m = n - |C|と置けばαSが導ける。2つのサブネットワークを結合しオペレーションを(パラメータαCとαSそれぞれで)ポアソン過程に従って概算することで、等式2からγCの見積もりを導出可能である。次章に示すシミュレーション結果はこの概算が問題なく実行できることを示している。プールの実際の価値を過小評価しても、より弱い条件下においてなお不安定性が導かれるからである。
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