雑感

(雑感)ブロックチェーンについての一般人の認識(11/19DSGWS後記)

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11/19にDSGワークショップで発表してきたのでその雑感をつらつらと書いていく。

雑感あれこれ

DSGは画像電子学会のうち、デジタルサイネージの研究会だ。ここでブロックチェーンについて非常にざっくりとプレゼンしてきた。発表資料はこちらに置いてある。

当日は10名程度が集まっていて、デジタルサイネージに直接関係なさそうな発表もあった。私のブロックチェーンに関するプレゼンも、IT関連という非常に大きな括りであることを除けばデジタルサイネージとは縁遠いものだったと思う。わりとブロックチェーン周りの情報を収集している自分にとって、いわゆるブロックチェーンに馴染みのない人に対して発表するというのは新鮮で、それだけに気づきも多かった。

当日は、ある質問から始めた。次の質問について、当てはまる人は挙手してください、とした。

①インターネットを聞いたことがある人? ⇒ 全員が挙手
②インターネットを使ったことがある人? ⇒ 全員が挙手
③インターネットの内部構造を説明できる人? ⇒ 1人だけが挙手

続いて、

④ブロックチェーンを聞いたことがある人? ⇒ 全員が挙手
⑤ブロックチェーンを使ったことがある人? ⇒ 挙手なし
⑥ブロックチェーンの内部構造を説明できる人? ⇒ 挙手なし

ブロックチェーンにも様々なものがあるので⑥の質問は簡単には答えられないものではあるし、インターネットとブロックチェーンは必ずしも対比しうるものでもないが、技術という側面で見たときに差が浮き彫りになると思い質問してみた次第である。

予想通り、聞いたことはあるけど使ったことがない人が大多数(というか全員)という結果だ。

面白いのはインターネットの内部構造を知らないのにインターネットを使えるという点にある。利用するのに構造を知る必要はないとも言える。インターネットはそれだけUI/UX周りが充実しているとも言えるかもしれない。一方でブロックチェーンはそもそも使ったことのある人がいなかった。どうやらUI/UXがあーだこーだ、という話以前の問題のようだ。利用できる環境がない、使い方を知らない、使ってみたいサービスがない、ブロックチェーンのサービスを知らない...など考えられることはいろいろあって聞いてみないと分からないが、やっぱりまだ技術としてのブロックチェーンであってサービスとしてのブロックチェーンにはなっていないのだなと感じた。

その後ざっとプレゼンを終えて、質問タイムに入った。

主な質問は以下の3つ。質問に対する回答ではなく、質問から得た気づきを書く。

①Bitcoinの巻き戻しで取引所が被害に遭ったと聞いたけど、あれはどういうこと?

恐らくBitcoinではなくMONAコインのReorgの話だと思うのでその前提で回答したが、ブロックチェーン=Bitcoinの構図というか、Bitcoin「だけ」を実現する技術がブロックチェーンであるという固定観念みたいなのが浸透してしまっているのではないかという印象を受けた。それとともに、仮想通貨の文脈からブロックチェーンを捉える向きがやはり多いのかなとも感じた。ブロックチェーンがBitcoinを実現する技術であることは事実だしブロックチェーンの仮想通貨の側面も非常に重要だが、仮にこれらの側面が一般に根付いてしまっているのであれば今後の普及にあたって厚い障壁になると思わざるをえない。

そしてプロトコル的には正しい挙動であることを説明するのも骨が折れた。

②筆者が思う今後ブロックチェーンが使えそうな領域は?

この質問はありふれたものに思えるが、「領域」と非常にざっくりと聞いているところが一つのポイントだと個人的に考えている。使用のイメージが湧いていればそれに伴って質問も具体的になるはず。例えば新型車の発表があるとする。発表者に使えそうな領域なんて聞き方はしないだろう。○○と比べて燃費はどうだとか、××と比べて駆動音はどうだとか、ざっくりと言ってしまえばその車のウリは何でどこがダメなのかを探る具体的な質問になるのが普通だと思う。車に詳しくない人でもこの程度の具体的な質問はぱっと思い浮かぶだろう(車を持たない私に思い浮かぶのだから間違いない)。それは車が「乗るもの」「道路を走るもの」などというイメージというか事実が既知であるからだと思う。一方で、その既知の知識が一般には浸透していないのがブロックチェーンの現在なのだろう。

③全くイメージが湧かない、銀行の約束手形のような仕組みなのか?

イメージが湧かない、理解しがたい仕組みというのは非常に納得できる。私も最初にブロックチェーンに触れたときは何だこれ?と感じたのを覚えている。確かに法定通貨であれば国(や中央銀行)が背後にいるし、約束手形であれば個人の信用が背後にある。国の信用が失墜すれば法定通貨の価値も下落するし、個人の信用が失われていれば手形の発行や手形での支払いは許されないだろう。いずれにしても「信頼できる何某かが保証するから価値が認められる」という考えが根付いているように思う。しかし、ブロックチェーンの場合はこの信頼できる何某かがいない(非中央集権的である)。昨今では処理を少数のノードに限定して一定の中央集権性を認めるブロックチェーンも出てきているが、それでもやはり完全に実権を握る主体はいない。それなのに価値が付くというのが非常に不可思議に感じられるのかもしれない。ブロックチェーンの仕組みはプロトコルに照らして不正がないことを非常に高い確率で保証するが、価値の正当性も、そもそも価値が付くこと自体も保証しているわけではないという点は改めて認識すべきだろう。逆に言うと、価値って何ぞ?お金って何ぞ?というところから始めた方が、わりと仕組みに対する理解は深まるのではなかろうか。

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雑感まとめ

...などとつらつらと書いてきたので最後に簡単にまとめてみる。

  1. ブロックチェーンは一般に認知されているが利用されていない。まして構造については理解もされていない。
  2. UI/UXとか以前にまだまだ技術レベルの話が先行していてとてもサービスレベルの話をする段階にない。
  3. ブロックチェーンと言っても一般人の頭の中は「Bitcoin」や「仮想通貨」のイメージで覆いつくされてしまってる可能性がある。で、このイメージはわりと普及の障害となりそう。Bitcoinじゃないブロックチェーン、仮想通貨以外のブロックチェーンの側面を説明するのが難しくなるからね。
  4. ブロックチェーンの展望を一般人は描けていない。というかそもそも技術的に何ができるかなどの既知のものがないので描けないよね、という話。
  5. わりと「信頼できる何某かがいて初めて価値が認められる」という観念があるんじゃないかと。価値って何ぞや?という問い直しから始めないとブロックチェーンの非中央集権的な仕組みって一般には理解されないんじゃないかと。

知らない人向けに説明するのってやっぱり難しい。うん。

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