簡単まとめ

LewenbergのBitcoinマイニングプールにおける協力ゲーム理論分析論文を読んでみる3

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本稿について

Bitcoinマイニングプールのインセンティブ設計について協力ゲーム理論の観点から分析したLewenbergらの論文を見ていきます。本稿では「2. Preliminaries」の序文を見ます。

原文はこちらになります。

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今回のまとめ

  • Bitcoinの概観
    • トレードをする「クライアント」とバリデートをする「マイナー」の2種類のエージェントがいる。
    • トランザクションはブロックに取り込まれ、ブロックチェーンに保存される。
    • ブロックにはメタデータ、前ブロックのポインタ、トランザクションリスト、ナンスが含まれる。
    • マイナーはランダム探索でナンスを変えてハッシュ値が一定の値より小さくなる値を探す(プルーフオブワーク)。
    • マイナーがブロックをマイニングできる可能性は時間単位に演算できるハッシュ数によって決まる。
    • 時間単位にマイニングするブロックの数はポアソン過程で近似できる。
    • ブロックチェーンをジェネシスブロックをルートとする木構造で捉える。
    • 最長のチェーン=メインチェーンであり報酬はメインチェーンのブロックに対してのみ支払われるため、マイナーは自らが知る最長チェーンを伸ばすインセンティブがある。
    • 通信のディレイはロケーション、ハードウェア、ソフトウェア、メッセージサイズによって変動する可能性がある。
    • ブロックの生成頻度は10分に1ブロックである。
  • 本論文で置いている仮定
    • 1ブロックあたりの報酬は一定とする。
    • マイナーは誠実でありプロトコルに従うものとする。
    • マイナー間のディレイは一定であるものとする。
  • プールは内部でブロックヘッダとナンスのみをやりとりするため、ブロック全体をやりとりするプール外でのマイニングと比べて通信面での効率性が高い。

※以下、今回まとめた範囲の論文和訳になりますので詳細をご覧になりたい方は読み進めてください。

2. 準備

まず、Bitcoin1の概観から始める。Bitcoinは非中央集権型の暗号通貨である。2種類のエージェントがBitcoinネットワークに参加している。一つは「クライアント(clients)」で、これはBitcoinでトレードをする。もう一つは「マイナー(miners)」で、これは金銭的な取引をバリデートする。私たちが焦点を当てるのはマイナー間のインタラクションである。Bitcoinのトランザクション履歴全体は「ブロックチェーン(block chain)」という共有データ構造上に保存されている。ブロックチェーン内の各ブロックには承認した最新のトランザクションのまとまりが含まれている。さらに、ブロックのヘッダにはその他のメタデータフィールドや前ブロックのポインタ、ブロック内のトランザクションのまとまりを圧縮して表現したもの、プルーフオブワークとしてふるまう"ナンス"フィールドが含まれている。従ってブロックはBitcoinが始まった時点で作られた"ジェネシスてブロック"をルートとするツリーを形成し、各ブロックはヘッダで参照するジェネシスブロックの子である。

新しいブロックをブロックチェーンに追加するプロセスは"ブロックのマイニング"といわれる。ブロックが有効と見なされるにはそのヘッダのハッシュ値が目標となる閾値tより小さくなくてはならない。tより小さいことを満たすべくハッシュの結果を修正するのにナンスフィールドを用いる。適切なナンスを見つける唯一既知の方法はランダム探索である。

マイナーは継続的にブロックのマイニングを試みるエージェントである。マイナーが時間単位に演算できるハッシュが多ければ多いほど、次のブロックをマイニングできる可能性が高まる。マイナーが有効なブロックをマイニングすると、Bitcoinネットワークに対してそれを公開する。そのブロックが最終的に広まって「最長のチェーン(the longest chain)」の一部になると、そのブロックの生成者にはBitcoinが報酬として与えられる。

ブロックのマイニング当たりの報酬は一定であると仮定する。ランダムなナンスによる1つのハッシュが有効なブロックにつながる可能性は非常に低く、あるマイナーが時間単位にマイニングしたブロックの数はポアソン過程で上手く近似可能だ。

ブロックツリーにおけるチェーンは、葉のブロックからジェネシスブロックまでのパスである。Bitcoinプロトコルでは最長のチェーンが唯一有効なチェーンであるので、最長チェーンに取り込まれているブロックに記録されていないトランザクションは有効と見なされない。さらにマイナーは最長チェーンのブロックについてのみ報酬をもらえるので、自身の知る最長チェーンを延伸するインセンティブがある。最長チェーンのルールはマイナーがチェーンのステートについてコンセンサスを形成するとともに二重支払い[37]等のプロトコルに対する攻撃を緩和できるように設計されている。マイナーは誠実でありプロトコルに従うものと仮定する。図1はブロックチェーンとその最長チェーンのルールを示すものである。マイナーはTCP[17]で通信し、通信の「ディレイ(delays)」は避けられない。フェローマイナー間のディレイは地理的な位置や物理的な接続、ハードウェア、ソフトウェア、メッセージのサイズによって変動する可能性がある[20]。単純化のため、2人のマイナー間のディレイは一定であると仮定する。

Bitcoinネットワーク全体における新ブロックの生成は期待値で10分ごとであるのに対し、(限られたリソースしかもたない)1エージェントはネットワークのサイズのせいでブロックを生成する前に非常に長い時間待つ可能性が高い。投じた計算リソースに対するリターンをもっと安定的かつ予測可能なものにするために、マイナーは協力して「プール(pools)」というチームを作り、プールはある「プール管理者(pool manager)」により管理される。プールメンバの一人がブロックのマイニングに成功すると、メンバは計算面での貢献に比例して報酬を分け合う[36]。

プール内でのインターネット通信は相対的に効率的である。というのもプール管理者は参加しているマイナーにブロックヘッダのみを送信し、マイナーは適切なナンスフィールドだけを返信するからだ。これはエージェントがブロック全体を次々に送り合うプール外の通信と対照的である。

脚注1.これは部分的な説明である。さらに詳細な説明は文献[30]やBitcoin Wikiで確認できる。

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