公表内容一覧
各種メディアを確認するに、様々な情報が錯綜しており、事実と推論(あるいは根拠のない妄想)の境界認識が曖昧になりつつあると思う。ここで、事件の当事者であるCoincheckと、行政処分を行っている金融庁から公表されている内容を確認しておこう。
(2018/4/3追記)
CC事件では、未だCoincheckは完全な業務再開には至っておらず、引き続き業務改善の実施状況を金融庁に報告している状況にある。しかしながら、最大の焦点となっていたNEMの補償については実施が確認され、業務も順次再開されるにあたり、最低限の決着を見た。これにより、事実と推論の境界も事件当時に比してはるか明瞭になったと考える。
従って、事実と推論の境界認識を明らかにするという本記事の目的が果たされたため、以降の事実の追跡を停止することとする。
Coincheck より公表されている内容
以下にCoincheckが直接公表した内容を記す。ソースはCoincheck社のHP、及びCoincheck社のTwitterアカウントである。
ただし、Coincheckが公表した内容のうちの一部は将来について言及するものであり(例えばNEMの補償方針等)、現時点で事実と断定できないものがある。
- 2018/1/26(金) 00:02頃、NEMの盗難が発生。
- NEMのブロックチェーンに記録あり。
- 同日 11:25頃、Coincheckが異常を検知。
- 同日 12:07頃、NEMの入金一時停止を告知。
- 同日 12:52頃、NEMの出金一時停止を告知。
- 同日 16:33頃、JPYを含め、全ての取扱通貨の出金一時停止を告知。
- 同日 17:23頃、BTC以外(オルトコイン)の売買の一時停止を告知。
- 同日 18:50頃、クレジットカード、ペイジー、コンビニ入金一時停止を告知。
- 同日 23:30頃、記者会見を開始(約80分、以下の動画を参照)。
- 文字ベースはこちらから。
- 2018/1/27(土) 14:55頃、同日17:00頃からCoincheck Paymentの一部機能停止する旨を告知。
- 日本円出金、及び新規支払いの受付が一時停止。
- 2018/1/28(日) 00:46頃、被害に遭ったNEM保有者への補償方針を発表。
- 保有者全員(約26万人)に対し、88.549円×保有数分を日本円でコインチェックウォレットに返却。
- 返金原資は自己資金。
- 同日 13:20頃、JPYを除く、取り扱い通貨全ての入金を一時停止を告知。
- 同日 14:06頃、同日15:00頃からCoincheckアフィリエイトプログラムの一部機能停止を告知。
- アフィリエイト報酬の承認が一時停止。
- 2018/1/29(月) 17:03頃、同日、金融庁から資金決済に関する法律第63条の16に基づく業務改善命令を受けたことを発表。
- 2018/1/30(火) 12:27頃、Coincheckが提供する各キャンペーンの一時停止を告知。
- マーケットメイカー出来高ランキング、二段階認証設定で30,000Satoshiプレゼントキャンペーンが一時停止。
- 同日 23:20頃、出金の一時停止はCoincheckが自主的に行っている措置であり、数日中に再開に関する見通しを出す旨を発表。
- 2018/1/31(水)、同日からCoincheckでんきのビットコイン決済、付与機能に関する一部機能停止をする旨を告知。
- 同日、同日18:oo頃より安定性向上を目的として、再開時期未定で公式ブログメンテナンスを行う旨を告知。
- 2018/2/3(土) 12:36頃、日本円出金再開に関する見通し、顧客資産の日本円と仮想通貨の保全状況を発表。
- 日本円再開の見通しは、外部専門家の協力も得つつ行っている日本円出金に伴う技術的な安全性について確認、検証作業を踏まえて改めて告知する。
- 顧客資産の日本円は金融機関の顧客専用口座に保全されている。
- 顧客資産の仮想通貨BTC、ETH、ETC、LSK、FCT、XMR、REP、XRP、ZEC、LTC、DASH、BCH(NEMを除く全ての取扱仮想通貨)も、ホットウォレットから退避し、コールドウォレット等に保管されている。
- 2018/2/9(金) 19:02頃、日本円出金機能に関する技術的な安全性の確認を完了し、2/13(火)から日本円出金を再開する旨を告知。
- 出金処理は申請順で対応。
- 仮想通貨の出金及び出金以外の機能は引き続き停止しており、安全性が確認でき次第再開。詳細は見通しがつき次第告知。
- 2018/2/13(火) 17:35頃、金融庁から受けた業務改善命令に係る報告書を提出したことを報告。
- 同日 20:00頃、記者会見を開始(約20分、以下の動画を参照)。
- 文字ベースはこちらから。
- 同日 20:36頃、日本円の出金処理再開を告知。同月11日15:00までの出金申請額約401億円の振込が完了した旨を報告。
- 2018/2/16(金) 21:33頃、情報改善体制の改善を目的とし、都度の進捗状況の開示やお問い合わせの多い内容に関しまして、継続的にお知らせする旨を告知。
- 2018/2/19(月) 15:03頃、事業継続に関する一部報道に対し、2018年1月29日に受けた業務改善命令および同年2月13日に提出した業務改善命令に係る報告書に基づき、態勢を強化した上で事業を継続していくとする旨を改めて告知。
- 2018/2/21(水) 15:09頃、Coincheckや関係者を名乗る詐欺について注意喚起。
- 同日、開発体制の強化を目的として、採用を再開。最初の募集はWEBエンジニアとSREエンジニア。
- 2018/3/1(木) 12:19頃、「レート検索機能」「レバレッジポジション履歴ダウンロード機能」をリリース。
- 同日 18:53頃、採用対象の職種に、プロジェクトマネージャー、IT総務、コーポレートITエンジニアがあることを筆者が確認(追加された時期は不明だが、少なくとも2018/2/21(水)以降)。
- 2018/3/8(木) 11:11頃、同日、金融庁から資金決済に関する法律第63条の16に基づく業務改善命令を受けたことを発表。
- 同日 16:00頃、記者会見を開始(約80分、以下の動画を参照)。
- 文字ベースはこちらから。
- 同日 18:51頃、NEMの不正送金に関して外部専門家の協力を得て行った調査結果の概要報告と今後の対応を発表。
- 2018/3/12(月) 15:59頃、NEMの不正送金の被害者に対し、同日中に日本円で補償をすることを告知。
- 補償日時:2018年3月12日中
- 補償金額:88.549円 × 日本時間2018年1月26日 23:59:59時点での保有数
- 補償対象:日本時間2018年1月26日 23:59:59時点でNEMを保有していたお客様
- 同日 15:59頃、一部の仮想通貨について、出金・売却について外部専門家の協力のもと行った安全性等の確認が完了したため、出金・売却を再開する旨を発表。
- 出金再開:ETH、ETC、XRP、LTC、BCH、BTC。
- 売却再開:ETH、ETC、XRP、LTC、BCH。
- 上記仮想通貨について、入金・購入は対象外。
- 2018/3/15(木) 10:47頃、一部仮想通貨の出金について、出金申請が非常に多く、目視等での確認も含めて数日程度かかる可能性があることを告知。
- 2018/3/22(木) 17:09頃、金融庁から受けた業務改善命令に対し、業務改善計画書を提出したことを報告。
- 同日 19:09頃、一部の仮想通貨について、出金・売却について外部専門家の協力のもと行った安全性等の確認が完了したため、出金・売却を再開する旨を発表。
- 出金再開:LSK、FCT。
- 売却再開:LSK、FCT。
- 上記仮想通貨について、入金・購入は対象外。
金融庁より公表されている内容
以下に金融庁が直接公表した内容を記す。掲載範囲はCoincheckに関わる公表内容と、仮想通貨界隈に関わるものに限定する。ソースは原則として金融庁HP及び、金融庁長官の委任を受けて業務を行うことがある財務局(関東財務局)とする。ここでは、新聞社等の報道内容や記事については掲載しない。
- 2018/1/26(金) Coincheckに対し、報告を要求。
- 資金決済に関する法律第63条の15第1項の規定に基づく報告要求。
- 同日、仮想通貨交換業者及びみなし仮想通貨交換業者に対し、不正アクセスに関する注意喚起を実施。
- 2018/1/29(月) 関東財務局長がCoincheckに対し、業務改善命令を発出。
- 資金決済に関する法律第63条の16の規定に基づく業務改善命令。
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
(1) 本事案の事実関係及び原因の究明
(2) 顧客への適切な対応
(3) システムリスク管理態勢にかかる経営管理態勢の強化及び責任の所在の明確化
(4)実効性あるシステムリスク管理態勢の構築及び再発防止策の策定等
(5) 上記(1)から(4)までについて、平成30年2月13日(火)までに、書面で報告すること。 - (補足)地方における民間金融機関等の検査・監督及び有価証券届出書の審査事務等については、金融庁長官から委任を受けて、その指揮監督の下に財務省の地方支分部局である財務局において行う。
- 2018/1/30(火) 仮想通貨交換業者及びみなし仮想通貨交換業者に対し、仮想通貨交換業者に対するシステムリスク管理態勢に関する自己点検を行い、速やかに点検結果を報告するよう要請。
- 同日、麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答。
- 2018/2/1(木) Coincheck以外の仮想通貨交換業者及びみなし仮想通貨交換業者に対し、システムリスク管理態勢に関する報告徴求命令を発出。
- 資金決済に関する法律第63条の15第1項の規定に基づく報告徴求命令。
- 対象は仮想通貨交換業者16社、みなし仮想通貨交換業者15社。
- 2018/2/2(金) Coincheckの立ち入り検査に着手。
- 資金決済に関する法律第63条の15第1項の規定に基づく報告要求。
- 同日、麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、Coincheckに関して言及。
- 2018/2/6(火) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、Coincheckに関して言及。
- 2018/2/9(金) コインチェック社事案に関する3省庁(警察庁・金融庁・消費者庁)局長級連絡会議を開催。
- 議事録等、内容を明らかにする資料は現時点で確認できず。
- 2018/2/13(火) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、Coincheckに関して言及。
- 2018/2/16(金) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、Cioncheckに関して言及。
- 2018/2/23(金) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、システムリスク管理を含む実効的な内部管理態勢の構築は、利用者保護を図るうえでも極めて重要であり、引き続き立入検査等を通じて確保を図っていく考えを表明。
- 2018/2/27(火) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、仮想通貨のみなし業者に関して、個別の進捗状況について回答することはないが、内部管理態勢が実質的にできているかが最も審査される対象になるのだろうと回答。
- 2018/3/2(金) 麻生財務大臣が閣議後記者会見で質疑応答し、仮想通貨の自主規制団体について、対応が機動的に行われることによって利用者保護を図られることが重要であり、自主性を尊重しつつ、引き続き早期に認定の申請というものがなされることを期待すると回答。
- 2018/3/8(水) 仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討するため、「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置。
- 2018/3/8(水) 関東財務局長より、Coincheckに対し、業務改善命令を発出。
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
(1) 適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
i.経営体制の抜本的な見直し
ii.経営戦略を見直し、顧客保護を徹底
iii.取締役会による各種態勢の整備
iv.取り扱う仮想通貨について、各種リスクの洗出し
v.マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係る対策
vi.現在停止中の取引再開及び新規顧客のアカウント開設に先立ち、各種態勢の抜本的な見直し、実効性の確保
(2) 顧客との取引及び顧客に対する補償に関し、当局に対し適切な報告
(3) 上記(1)に関する業務改善計画を平成30年3月22日までに、書面で提出
(4) 業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに、書面で報告
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
- 2018/3/8(水) 関東財務局長より、バイクリメンツ株式会社に対し、業務改善命令を発出。
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
(1) 経営管理態勢の構築
(2) マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係る管理態勢の構築
(3) 利用者財産の分別管理態勢及び帳簿書類の管理態勢の構築
(4) システムリスク管理態勢の構築
上記(1)から(4)までの事項について、講じた措置の内容を平成30年3月22日までに、書面で報告
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
- 2018/3/8(水) 関東財務局長より、FSHO株式会社に対し業務停止命令及び業務改善命令を発出。
- 資金決済に関する法律第63条の10への違反等に基づく業務停止命令及び業務改善命令。
- 業務停止命令の内容は、次の通り。
平成30年3月8日から平成30年4月7日までの間、仮想通貨交換業に係る全ての業務を停止(仮想通貨の交換等に関し利用者に対して負担する債務の履行等を除く) - 業務改善命令の内容は、次の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
i.これまでの取引に関する取引時確認の実施及び疑わしい取引の届出の実行
ii.上記i.を確実に行うための態勢構築
iii.利用者情報の安全管理を図るための態勢構築
iv.法定帳簿の記載の適切な実施のための態勢構築
上記i.からiv.までの事項について、講じた措置の内容を平成30年3月22日までに書面で提出
- 2018/3/8(水) 関東財務局長より、GMOコイン株式会社に対し、業務改善命令を発出。
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
(1) 業容の拡大等実態に応じた実効性あるシステムリスク管理態勢の構築
(2) 上記(1)に関する業務改善計画を、平成30年3月22日までに書面で提出
(3) 上記(2)の業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに書面で報告
- 業務改善命令の内容は、次の通り。
- 2018/3/8(水) 東海財務局長より、ビットステーション株式会社に対し、業務停止命令及び業務改善命令を発出。
- 業務停止命令の内容は、次の通り。
平成30年3月8日から平成30年4月7日までの間、仮想通貨交換業に係る全ての業務を停止(利用者財産の返還のための業務等を除く) - 業務改善命令の内容は、次の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
1)利用者財産の残高確認・照合等を適切に実施するための態勢整備
2)利用者財産の移動及び処分を適切に実施するための態勢整備
3)利用者財産を適切に管理するための態勢整備
上記1)から3)の対応・実施状況について、講じた措置の内容を平成30年3月22日までに、書面で提出
- 業務停止命令の内容は、次の通り。
- 2018/3/8(水) 近畿財務局長より、テックビューロ株式会社に対し、業務改善命令を発出。
- 業務改善命令の内容は、以下の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
(1) 実効性あるシステムリスク管理態勢の構築
(2) 適切に顧客対応するための態勢の構築
(3) 上記(1)及び(2)に関する業務改善計画を、平成30年3月22日までに書面で提出
(4) 上記(3)の業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに書面で報告
- 業務改善命令の内容は、以下の通り。
- 2018/3/8(水) 福岡財務支局長より、ミスターエクスチェンジ株式会社に対し、業務改善命令を発出。
- 業務改善命令の内容は、以下の通り。
適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応
(1) 経営管理態勢の構築
(2) 利用者財産の分別管理態勢の構築
(3) システムリスク管理態勢の構築
(4) マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係る管理態勢の構築
(5) 苦情処理管理態勢の構築
上記(1)から(5)までの事項について、講じた措置の内容を平成30年3月22日までに、書面で報告すること。
- 業務改善命令の内容は、以下の通り。
- 2018/3/23(金) 金融庁より、Binanceに対して警告を発出。
- 事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係16.仮想通貨交換業者関係Ⅲ-1-4(2)②に基づく警告発出。
- (補足)上記は、警告が発出されていることから、無登録業者に対する対応のうちのロのケース、すなわち、「無登録に至った原因に故意性・悪質性があると認められる場合、その他利用者保護上必要と認められる場合には、捜査当局に連絡するとともに、かかる行為を直ちに取り止めるよう別紙様式4により文書による警告を行」ったものと考えられる。
※記事中の動画の著作権は製作者様に帰属します。
更新履歴
2018/2/19(月) 新規作成。
2018/3/1(水)、コインチェックと金融庁から新しく公表された内容を追記。
2018/4/3(火)、コインチェックと金融庁から新しく公表された内容を追記。